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Wednesday, March 01, 2000

Topic of the Month 2000年3月




3月のトピック:石鹸は24時間「寝ている」のか?
~のぞいた人だけ知ってるジェルステージの秘密~

「ジェルステージ」とは何ぞや?と思っている方もたくさんいるでしょう。石鹸の作り方を読むと「石鹸生地を型に流し込み保温し24時間(又は一晩)寝かせる」と書いてありますね。そして次には「24時間後に型から出す」と書いてあります。さて、石鹸生地を24時間保温している間作り手である人間はぐうぐう寝てしまいますが、石鹸も毛布に包まってぐうぐう寝ているのでしょうか?
先輩ソーパー達は「24時間寝かせている石鹸生地を絶対にのぞいてはいけません!」とよく言います。これはのぞき見することで石鹸生地の温度を下げてしまうからです。急激に温度が下がると分離する可能性もありますから、先輩達の言葉は初心者の無邪気な好奇心に対するいじわるって訳でもないんですね。タオはそんな有難い先輩達からの助言を守ることなく、ちょくちょく「どうなってるかな?うしし。」とのぞいていたんです。そして・・・そこでタオが見たものは!?そしてその禁断の光景とは!?             






【始めに】
「ジェルステージ」とは、鹸化が進み熱の出てきた石鹸生地が透明のジェル状になる段階のことを言います。これはHP法をしている人ならおなじみの光景ですね。CP石鹸の場合も、24時間保温している間に石鹸生地の熱がどんどん上昇しジェル化していきます。しかし保温が十分でないと生地に透明度が出るほど熱が上昇しません。つまりジェルステージに届く前に温度が下がってしまうんですね。ではジェルステージを通った石鹸と通ってない石鹸は何が違うんでしょう?噂では「ジェルステージを通った石鹸の方が透明感がありマイルドだ」「ジェルステージを通ってない石鹸の方が色が均一感があって良い」「大差ないよ~。そんな細かいこと気にするな。」などジェル派、ノージェル派、無関心派の意見があります。手作り石鹸の本でCP石鹸とジェルステージについてディスカッションされたものは残念ながら見たことがありません。・・・そんなたいしたトピックぢゃないのかな(小声)・・・とにかく、タオはここでジェルステージについて自ら実験をしてみることにしたのです。





【実験:ジェルステージの秘密】
(注)この実験は科学的なものじゃありません。何かを証明するのではなく好奇心を満たすのです。
ここでの実験結果を一般論や科学的事実の様に扱ってはいけません。

<知りたいこと>
・ジェルステージとはいつ頃始まるのか?
・ジェル生地の温度は?ノージェルの温度は? 固さは?
・24時間後の色の均一感、透明度、ソーダ灰の量は?(ソーダ灰とは石鹸の上につく白い粉のこと。本当に炭酸ナトリウムかそれとも乾いた石鹸なのか知りませんが、肌に無害なことは確かです。ここでは便宜上「ソーダ灰」と呼びます。)
・24時間後のアルカリ度
・一月後のアルカリ度


<条件>
・レシピ:オリーブ(45%)、ココナツ(30%)、パーム(25%)
オプション無し:オイルだけの状態で知りたい
苛性ソーダのディスカウント7%
オイルと苛性ソーダ水の温度は摂氏48.9度
・容器:プラスチック型(フタ付きタッパ)
・室温:摂氏25度(うちは冬でも暑いんです。)
・保温具:タオル1枚、毛布2枚


<メソッド>
同バッチの生地をふたつの型に各々同じ分量だけ流し込む。ひとつはしっかり保温、もうひとつは全く保温しない。3時間置きに各生地の温度と固さをチェック、翌日型から出したらアルカリ度をチェックする

<結果>



  (表1)24時間中の温度&固さチェック





時間




ジェル生地(黄)




ノージェル生地(青)




コメント




型に流し込む
(3:00pm)




43.3C




43.3C

さあ、いよいよ!



3時間経過
(6:00pm)
温度&固さ




58.9C (gel)
ワセリンくらい




50C (no gel)
ソフトマーガリンくらい

ジェルの方は透き通ってオリーブオイルみたい、ノージェルは白い



6時間経過
(9:00pm)
温度&固さ




52.2C
相変わらず
ワセリン状態




内側32.8C、外側30C
内側はややジェル化、しかし全体的にバターくらい

しまった!ノージェル生地の中心部がジェル化してきた!急いで場所を移動し、温度は型の外側、内側はかる。ジェル生地は熱い!



9時間経過
(0:00)
温度&固さ




40C
気持ち弾力のある
ふるふるゼリー
くらい




内側27.8C、外側26.7C
固めのバターくらい

ノージェル生地はやや中央部のジェルに広がりが見えたものの温度は下降。内外の温度差も減った。ジェル生地も峠を超したかな。



12時間経過
(3:00am)









やっぱり人間は毛布に包まりぐうぐう寝るのだとわかった。



16時間半経過
(7:30pm)
温度&固さ




32.2C
もう固まった




内側24.4C, 外側22.8C
もう固まった

おはよう。ジェル生地はまだ暖かく、うっすら透き通っている。ノージェル生地はすっかり冷えた。ややジェル化した中央部はジェル生地ほど透き通っていない。



24時間経過
(3:00pm)
温度&質感




28.9C
ねっとりつまった
ようかんみたい




24.4C
ジェル化してないところは、しっとりしてるけど
ちょっとポロっとする
クッキー生地みたい

ジェル生地はまだ少し暖かく、透明感がありまるで船和の「いもようかん」そっくりだ。おいしそう。ノージェル生地は白っぽく透明感が無い。


(表2)24時間後の見ためチェック













チェックポイント




ジェル生地




ノージェル生地




コメント




ソーダ灰




全く無し




表面はソーダ灰で覆われている。
特に外側に覆い。




やっぱり思った通りだ。




色&透明度




なんとなく緑で透明感がある。
いもようかんみたい。




ジェル化してない所は
真っ白になった。




やっぱり思った通りだ。




色の均一感




全部ジェル化したから統一感が
あり色ムラは無い。




中心部ジェル化、
外側ノージェルだった為、
色ムラがある。




なるほど。

 
(表3)24時間後のアルカリ度チェック








24時間後
汚れ落ち&洗い上がり




顔に皮脂が残って
しっとりした感じ




顔の皮脂を取り除くような
さっぱりした感じ

顔の右半分はジェル、
左半分はノージェルで洗った。



舌テスト




なんともない。




舌先がぴりぴりする。不快




これはたまらん!




洗顔直後の肌




ちょっとつっぱる




ぱりぱりつっぱる。不快




これはたまらん!




洗顔1時間後の肌
(基礎化粧なし)




まだちょっとつっぱる




皮脂の分泌が多くしっとり




なるほど。






<まとめと分析>

(表1)24時間中の温度&固さチェック
ここでの最大のミスはノージェルの中央部がジェル化したこと。(でもおかげでわかったこともあったよ。)ジェルステージとはワセリンくらいの固さ。今回、温度は3時間後に60度近く上がり、あとはゆっくり下降していった。ジェルステージを通らない生地はそれほど柔らかくならず、温度も外温に負けどんどん下がっていった。 温度の上昇は早いうちに起こるらしい。温度は一気に上昇してピークまで来たらゆっくりと下降して行くのが自然の流れみたいだ。オーブンのたね火やホットカーペット、こたつ等で24時間ずっと生地を暖めるとゆっくりした温度下降を妨げるんじゃないだろうか?そうすると生地も料理しすぎにならないかな?実際、中心部が火山口みたくなったり、表面が「エイリアンの脳みそ」みたくなったときは熱が自然に下がるのを妨げたときだった。品質には何も問題は無かったけど、あれは熱すぎたんだね。


(表2)24時間後の見ためチェック
ジェルステージを通ったらソーダ灰が出なかった。しかし温度はひとつの要因にしか過ぎないと思う。オイルやオプション材料の種類によってソーダ灰の付き方が変わってくるし、「温度」というのはソーダ灰のひとつの要因でしかないと思う。でもソーダ灰を減らすならジェルステージが必要なのはここで明らかになった。それからジェルステージを通ると(オリーブ)オイルの色が出ると思った。均一感っていうのはジェル・ノージェルにかかわらず、中途半端にジェル化するとムラが出るということなんじゃないかな。やっぱり型の外側の部分が一番ジェル化しにくい。
(表3)24時間後のアルカリ度チェック
始めは手を洗ったが違いがわからず、もっと敏感な顔を使ってテストした。タオの顔はかなりの乾燥&敏感肌。リトマス試験紙なんかより正確にアルカリ度が分かるんです。(*皆さんは真似しないでください!)洗顔での違いは明らかだった。やっぱりノージェルは肌にキツイ!化粧水も付けないで1時間は辛かったよぅ。ぱりぱりで笑えないもの。1時間後にノージェルで洗ったサイドがやけにしっとりしてたのは、肌が「こりゃ乾燥しすぎ!」と焦って皮脂をたくさん分泌した為だろう。これじゃいきなりオイリー肌になっちゃう。皮脂を剥ぎ取られたり、異常に皮脂が付いたり、肌の負担が多くかわいそうだ。ジェルステージを通った方は、1ヵ月寝かせたものよりややつっぱるくらい。ひどく不快という訳ではないけど特別良くもない。やっぱり1ヵ月以上寝かせたのが一番だね。
「舌テスト」とは24時間後の石鹸を舌先でなめてアルカリ度を見る自暴自棄な方法。(*おすすめはしません。)タオは「舌テスト」が恐くて一度もしたことなかったけど、今回は初挑戦してみた。しっかりジェル化した石鹸をなめてみると、舌は全くなんともないんです。別に痛くも痒くもおいしくもまずくもない。なんだぁ、安全なんだ、と思ってノージェルをなめると急にピリピリと舌先が痛い!この感覚はかなり不快!(ちなみに苛性ソーダが残った失敗石鹸は舌が焼けるように痛いと思うよ!)
という二つの野蛮な方法でわかったことは、ジェルステージを通った石鹸はしっかり鹸化が進み、24時間後には「あと少しでマイルドな石鹸!」という所まで来ているということ。そしてジェルステージを通ってない石鹸は鹸化が十分に進まず、そのまま使ったら肌に負担を与えるアルカリのキツイ石鹸だということ。


<結論>
24時間後の段階では、やっぱりジェルステージを通っている石鹸がいい。


<1ヵ月後の石鹸はどうなる?>
一ヶ月後のアルカリ度はどうなんだろう?ノージェルもこれから一月の間に鹸化を進めてそれなりにマイルドになるのかな?それともジェルステージを通らなかった石鹸はジェル石鹸に劣ったままなのだろうか? 二つの石鹸の泡立ちや使用感の差は?


こんなエセ科学実験を最後まで読んでくれた方々、どうもありがとうございました。