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Friday, November 18, 2011

丁寧に作る

ずっと忙しくしてました。今日でようやく一段落です。
忙しいながらも充実した時間を過ごしたあとは、休息もまた楽しいですね。

ここしばらく頭の中で浮かんでは消え、消えては浮かんでいたことがあったので、今日はそれを書いてみます。

石けん作りを始めると、最初はきっちりとマニュアル通りに作ろうと努力します。私も始めの頃は教えられた通りに作っていました。それが経験を重ねるにつれて、手を抜くところがわかったり、手の抜き具合がわかったりしてきます。 例えば、私の場合は温度計で温度をはからなくなったのがひとつ。最初のうちは苛性ソーダ水とオイルを何度にきっちり合わせて・・とやっていたのですが、次第に温度計を使わなくなりました。今は手で鍋の外側を触りながら、感覚で温度の判断をしています。既成の手順の上では、温度計を使わないってかなりの手抜きだと思います。でもそれは本当に手抜きでしょうか。私はむしろ逆だと思っています。

講座で温度計を使わないとびっくりされることがよくあります。触って温度をみているので、手で「これは45度」などと目安をつけられると思われているのかもしれません。確かにざっくりとはわかるけれど、実のところ細かく何度なんてわかりません(笑)

それどころか、私はそれほど温度を見ているわけではないんです。みているのは素材や生地の状態。手を鍋底や苛性ソーダ水の容器に触れることで、温かさがわかります。でもその温度が大切なのではなく、その温度のときの素材は一体どうなっているかを見ているんです。ぱっと見るだけで素材や石けん生地の状態がわかれば、手で触ってみる必要はありません。石けん生地はある程度、目でみると状態がわかるので、手で鍋底を触らないこともあります。でもオイルや苛性ソーダ水に関しては、そこまではわからないので、ひとまず手で触ってから状態を見ているわけです。

温度計を使うということは目を使うことだから、だったら温度計の数値を目で見て、それから素材や生地の状態を見たらいいんじゃないの?と思うかもしれません。でも温度計って数字です。数字は客観的すぎるんです。例えば摂氏40度という数字には「熱い」とか「冷たい」がないんですよ。40度は40度。それだけです。寒い日でも暑い日でも40度は40度。何も違いがないんです。これこそ科学の便利さではあるのですが、石けん素材や生地にとって寒い日の40度と暑い日の40度はぜんぜん違うんです。手で鍋底を触ってみれば、温かいとか冷たいという感覚がともないます。講座では「これがお風呂だったら入れるかな〜と考えながら触る」という説明をよくします。それはなぜかと言うと、寒い日と暑い日のお風呂のぬくぬく加減って温度計の数字にしてみるとかなり違うと思うんです。でも「ちょうどいい」と思う感覚、ピンと来るところはひとつなんです。

温度計を使わないと私が言うと、温度はいい加減でも石けんになるんだ〜とほっとされる方も多くいます。確かにそれも当たっています。どんな温度でも石けんになりますからね。でも温度計を使わないこと自体は、手抜きではないんです。温度計の数字に振り回されて肝心の生地の状態に意識が届かないのはもったいないこと。だったら手で温度を知り、目で生地を見た方が、自分で作っているものがよく見えます。始めはコツがつかめなくても、続けていれば次第に感覚が養われてきます。温度計を使わずに、自分の感覚で素材や生地の状態を判断することは、実はものすごく丁寧な作り方なんじゃないかと思います。