Search This Blog(ブログ内検索)

Tuesday, December 08, 2009

「ダイアログ」 手作り石けん販売の話(2)


<2回目>

(た)ところで、由美子さんはご自身が薬剤師であるとおっしゃっていましたが、認可は薬剤師さん本人が取るものなのですか?それとも製造者なり、会社なりが取るものなのですか?例えば、薬剤師の免許を持たない人が化粧石けんを製造販売したい場合、薬剤師さんを雇うというようなかたちが考えられると思うのですが、その場合の認可は雇用主(製造者や会社)が保有するものなのですか?それとも従業員である薬剤師さんが持つものなのですか?

(ゆ)会社が保有するものです。法人組織じゃない場合は個人になりますが、どっちにしても、「統括製造責任者」という人物をおかなくてはならず、その責任者の条件として、薬剤師であったり、大学で応用化学を履修した人であったり、ということが定められています。化粧品会社で3年以上の実務経験があること、という条件もあるので、最初は私もどこか化粧品会社で雇ってもらって3年間働こうかなって思ってたんです。でも、実際に伺うと、それは薬剤師じゃない人の場合のことだったんです。つまり大学で専門の勉強をしていなくても、実務経験があれば統括製造責任者になれるということなんです。
それと、もう一つ驚いたのが、化粧品の認可というのは、製品そのものに与えられるものではないということです。それまで、手作り石けんは過剰油脂やグリセリンがたっぷりだから薬事法の石けんにはあたらない、というウワサがまことしやかに流れていたのですが(笑)、それは全く関係ないということです。確かに、JIS規格となると、石けん分何パーセント以上とかいう規格があるようですが、化粧品に関してはそういう基準はありません。「化粧品製造販売業」の認可を受けたものが作れば「化粧石けん」となります。ですから、「手作り」だから化粧品として認められないということではないのです。ただし、製品ごとに販売名登録というのをしなくてはならないですし、決まった手順に従って作らないといけないですから、気の向くままに色んなレシピで作ってそれを化粧石けんとして販売、ということはできません。いつも同じ物を同じように作らないといけないという点では、手作り石けんの面白さはないかもしれないですね。毎回ちがうものができるのも手作り石けんの魅力ですものね。
ただ、私は日本でも手作り石けんを「肌に使える石けん」って堂々と言いたい一心でいつかは薬事法の認可をもらおうって思ってました。今はもう、いくつかのちゃんとした会社でコールドプロセスの石けんを化粧品として販売しておられますし、何も私が個人で手作り石けんを化粧石けんとして販売しなくても良いかなーっていう気がしています。私は事業をやりたかったわけではないですしね。石けんをビジネスとしてやっていくには、もっと勤勉で真面目でアイデア豊富な人でないと無理だと思います(笑)。キャヴィッチの本(Soapmaker's Companion)にもちゃんと書いてありますね。簡単に石けんビジネスに手を出してはいけない、みたいなことが。薬事法の規制を受けないアメリカでもビジネスにするのは大変ってことですね。それでも成功している方もおられるってのはすごいなと思います。

(た)事業としてやっていくのは大変ですよね。アメリカでは手作り石けんや手作りコスメの団体がいくつかありますが、ビジネスのためのネットワークという感じです。加入すると保険にも入れます。こういったサポートがあるのも、成功する人が多い理由のひとつかなと思います。
製品ごとの販売名登録はアメリカにはありませんが、そういう規制を作ろうという動きは出ていました。2008年に出されたグローバリゼーションアクトという決議案で、販売する各製品をFDA(食品医薬品局)に登録する、という内容です。各製品につき登録しなければならず、登録料も多額なことから、手作り石けんや手作りコスメの事業団体がかなりのプレッシャーをかけて決議書の内容を変更させたりしていました。結局、その後、話が進んでいないようなので、決議案そのものが消えてしまったのかもしれませんが。
日本の販売名登録というのも、商品ひとつづつに対し、登録料を支払うのですか?販売名にもいろいろ決まりがあるんですよね?

(ゆ)販売名の登録は無料です。薬務課に申請するだけです。化粧品製造業、製造販売業の認可を得るのには、申請料が必要で、5年ごとに更新しないといけません。もちろん、その都度更新料が必要です。もし、ひとつひとつの製品に登録料が必要となると、大変ですね。
販売名の決まりは色々ありますよー!食べ物の名前をつけてはいけないとか。だから、例えば「豆腐石けん」「ミルク石けん」なんてのはダメです。じゃあ、どうしてるんだってことになりますが、よーく裏ラベルの表示を見ると、小さな字で「販売名 マイルドソープ01A」とか、割と素っ気ない名前が書いてあります。それが登録してある販売名なんです。ラベルの表に大きく書いてあるのが販売名とは限らないんですね。それが認められるのか、本当は違反なのかはわかりませんが、今のところそんな感じで販売されているものが多いように思います。日本で石けんを手にする機会があったら、是非確かめてみてください。面白いですよ。
それと、基本的に1つの販売名につき1つのレシピなんですが、シリーズ登録というのがあって、色違い、香り違いは同じ販売名で良いんです。ということは、手作り石けんの場合、オプション材料を香り付け、色づけの材料とするなら、ひとつの販売名で色んな石けんが作れることになりますよね。オイル配合は変えられませんが。

(た)なるほどー。消費者が思っている商品名と登録されている販売名は必ずしも一致しないケースも多々ある訳ですね。今度、日本に帰ったときには、じっくりチェックしてみます。

手作り石けん販売の話(3)へ続く