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Sunday, September 01, 2002

Topic of the Month 2002年9月

9月のトピック
手作り石けんのpHに関する超超超私的なエッセイもう9月かぁ。
9月と言えば、秋。
秋と言えば、夜長。
夜長と言えば、あれこれ考える。
あれこれ考えると言えば、石けん。
石けんと言えば・・・ホームページ。
ホームページと言えば、今月のトピック。
今月のトピックと言えば、もう9月かぁ。
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前書き
エッセイと言えば私的に決まってる。それをナゼ「超超超私的」って?
それは言葉のパワーのせいです。言葉とは、ときとしてそれの持つ意味以上に大きくなってしまうもの。だから「超超超私的」で駄目押し!(笑)ここに書くことは、あくまでも自分が勝手に思ったことです。どうぞそれ以上に大きく取らないでください。マニュアルとかバイブルと言われる完全無欠でオールマイティなものを私は目指していません(そんなの絶対無理)。このエッセイを書く目的は、いつも当り前に思っていることを違う視点から見たり、普段あんまり考えていないことたまには考えてみよう、というだけです。このエッセイをきっかけに、あれこれ考えていただければそれで大満足。そして自分のスタンスは自分で選択できるのだということを忘れないでください。
それからこのトピックは一般の方に向けて書きました。化学を専門にしている方向けではありません。
では本題へ。


手作り石けんのpHはなんのためにはかっているんだろう?
これは私の素朴な疑問です。pHをはかるということは、何かを知るため。何かとは手作り石けんの場合、アルカリの強さですよね。ではアルカリの数値を知ることで一体何がわかるんでしょう?これには「肌に対する刺激」と答えが返ってきます。本当に使える石けんになっているかな?肌がピリピリしたらどうしよう!自分が作った石けんを目の前にして、そんな不安がよぎることがありますよね。だからpHを測定すれば、刺激があるかどうかの目安となる訳でしょう。しかしこの場合の「アルカリ」と「刺激」は果たしてイコールなんでしょうか?
一般的に知られているように、石けんのpHは10前後です。それに対して低刺激を宣伝文句にしている市販の洗顔剤は、肌のpHに近い弱酸性の商品に代表されるように、石けんよりpHの低いものばかり。もしアルカリ=肌への刺激という公式が正しいのなら、手作り石けんは市販の洗顔剤よりはるかに刺激が強いことになります。そしてpH6の市販品に比べたら、手作りせっけんがpH9.5なのか10.5なのかという違いは、どちらにしても刺激が強いということになり、あまり意味をなさないような気がします。しかし手作り石けんを使い始めたきっかけを尋ねると、多くの人が「市販の洗顔剤が肌にあわず刺激を感じたから」と答えます。そして刺激の原因として、防腐剤や香料など合成添加物を挙げています。そして石けん派の意見として、「弱酸性」や「pHが低い」はキャッチーな宣伝文句にすぎず、(pHが10前後あっても)石けんは合成のものより肌に優しい、と主張しています。
また「刺激」というのはとても主観的なものです。例えば、普通肌のAさんと敏感肌のBさん。同じものを使ったら、Aさんは問題なく、Bさんは刺激を感じた、ということがよくありますよね。このふたりに石けんをあげるときに、「この石けんのpHは9だから刺激はないと思う。」とは言えるでしょうか?実際は、「この石けんにはこれとこれとこれが入っている」というように材料を刺激の目安として伝えますよね。また同じ人間でもその日の体調によって肌が違います。先週はこの石けんで調子がよかったのに今日はつっぱるなーと言うことありませんか?きっと石けんのpHは同じ数値か、もしくは先週よりちょっと下がっているかもしれません。このような点から考えると、実際に肌に感じる刺激はアルカリうんぬんというより、原材料の種類や個人の肌に左右されているように思います。
となるとここでまた素朴な疑問です。
手作り石けんのpHはなんのためにはかっているんだろう?
未反応の苛性ソーダがあったら危ないから。pH10ならいいけど、pH13だったらコワイ!と答える人がいるでしょう。
私の経験から言うと、未反応の苛性ソーダの可能性は(1)そのまま白い結晶として石けんの中に残るか、(2)オイルが激しく分離するかどちらかです。(1)の場合は、ナイフでカットするとゴリゴリと当たります。(2)の場合は、石けん生地の表面が厚い液体の層で覆われています。原因は、苛性ソーダを誤って多く入れすぎたか、撹拌不足によるもので、どちらの場合も型出し後に普通の石けんに見えないのが特徴です。(普通=常識で考える範囲で)
つまりpHをはかる以前にアブナそうな石けんはアブナく見えます。ごく普通に過剰油脂を残して作り、一晩くらい保温して、1日以上たってごく普通にカットできる石けんは、過剰アルカリでトラブルがあるとは考えにくいと思うのです。ちなみに石けんが柔らかいというのは油脂の問題なので、石けんが柔らかいからと言う理由で過剰アルカリを心配する必要は全くありません。保温中にジェル化した方が鹸化の進み具合が早いのは確かだと思いますが、ジェル化していない石けんでも型出し後に手を洗って肌が溶け出すことはないと思います。(粘膜は刺激を感じることがあります。だけど石けんをいきなり目や生傷に入れたりする人はいないですよね。)
さあ、またここで素朴な疑問です。
手作り石けんのpHはなんのためにはかっているんだろう?
石けんのpHを時間を置いてはかってみると、型出し後が一番高く、時間がたつにつれpHが低くなる。事実、石けんは何か月も乾燥させた方がうーんとマイルドになっている。だからやっぱりアルカリが低い方がマイルドという目安になる。そう答える人もいるでしょう。
確かに時間がたった石けんはマイルドだという意見をよく聞くし、私も同じように感じます。しかし型出し後から2ヵ月後のpHの変化はどれくらいなんでしょう?仮に10.5から9.5くらいに下がったとしたら、あまり大きな違いはないような気がします。ましてや、熟成して3ヵ月後と1年後ではきっとほとんどpHは変わらないと思うのです。だけど寝かせれば寝かせるほどマイルドになると思うのはなぜなんでしょう?
さて、ここからは受け売りです。
型出し直後の石けんとたっぷり寝かせた石けんの大きな違いは、水分の量です。水分は、苛性ソーダと油脂を反応させる媒体として使いますが、一旦反応が終われば用無しなので、乾燥して飛ばしてしまいますよね。一説によると、型出し直後の石けんは水分が多く残っているため肌にたくさん付きやすく、余分な皮脂を取られてしまうとか。それに対し、しっかり乾燥させた石けんは肌に石けん分が付きにくいのでマイルドに感じるそうです。いくつかのMLでチラホラと聞いた話しで真実のほどは知りませんが、熟成中の一番の大きな変化が水分の量ということを考えると納得がいくように思います。それから、ジェル化した石けんはジェル化していないものより保温中に水分が飛びます。温度と鹸化スピードの関係もあるでしょうが、水分の量的に考えても型出し直後はジェル化石けんの方がマイルドというのは当てはまりますよね。もちろん「マイルド」は主観的なものだし、油脂の種類にもよるし、私の単なる憶測で全然化学的ではないのですが。
最後に再び素朴な疑問です。
手作り石けんのpHはなんのためにはかっているんだろう?
あなたの場合はどうですか?
私は上の理由で、手作り石けんのpHをはかっても、刺激とかマイルド感を知る目安になるとは思いません。(もし違いが出るのであれば)オプションやディスカウントによるpHの違いを化学的にはかるのはおもしろいかもしれませんが、もしそうするなら、ちょっとフンパツして正確にはかれる測定機をゲットした方がいいように思うのです。せっかくサイエンスをツールとして使うのなら、微妙な数値を細かくチェックできるサイエンスの良さをしっかり利用するのがいいと思います。
私もいつか買っちゃおうかなー。<そう言いながら本ばかり買う。



後書き
何度も言いますが、これは超超超私的なエッセイ。
違った意見もどんどん聞きたいです。そうして理解を深めることで石けん作りがますますおもしろくなっていきます。
いつも言うけど、世の中に絶対的な答えや完璧な考えなどありません(←私の中ではね)。不完全だからこそ改善の余地があっておもしろいんです。皆であれこれ違った考えを出して、石けんワールドをますます充実させていきましょう。
それが私が一番望むことです!