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Friday, December 01, 2000

Topic of the Month 2000年12月

12月のトピック
ミニシリーズ「ハイドロソル」
~ハーブ蒸留水を探る~11月のトピックの終りにミニシリーズ~あの「水」をさぐる~ と書きました。
あの「水」ってどの「水」?あの水とはただの水ではございません。
あの水とは今、静かにその素晴しさが見直されてきているハイドロソルです。
今月はミニシリーズ。ハイドロソルの魅力を小出しにご披露致します。


1.ハイドロソルって何ぞや?
ハイドロソルはhydrosol。hydro(水)とsolution(溶液)のくっついた言葉です~。ここでご紹介するハイドロソルとは、一般的に精油を蒸留抽出する際にできる植物の成分を含んだ水です。代表的なものにローズウォーターやラベンダーウォーターなどがあります。ハイドロソルと精油の大きな違いは含んでいる成分の違いです。精油はその名の通り油溶性の植物成分を含んでいますが、ハイドロソルはこちらもその名の通り水溶性の植物成分を含んでいます。だから精油は水に入れると浮くけど油にはなじみます。逆にハイドロソルは水ですから基本的に油とは混じりません。
2.ハイドロソルって本当に「副産物」?
ハイドロソルは精油抽出のときにできる副産物、とよく言われています。しかし本当にそうかな?では最初にどのようにハイドロソルができるかみてみましょ。
まずは精油を抽出したい植物があります。これを大きなタンクなどの容器に入れます。そしてタンク内の植物に(大抵は下から)蒸気を送ります。そうすると蒸気の熱で植物細胞が壊れ、植物成分が蒸気と一緒に出てきます。次にこの蒸気を冷却します。すると上層と下層の2層に分かれます。上層は精油です。下層は植物の成分を含んだハイドロソルです。ハイドロソルは、ミントのように植物の葉などの場合はハーバルウォーター(herbal water)、バラのように花の場合はフローラルウォーター(floral water)と呼ばれることもあります。
さてさて、ここまで読むとハイドロソルってやっぱり副産物的印象を受けますね。植物から精油を取り出すときに使用した媒体である蒸気=水を利用している訳で、これって石鹸作りでできたグリセリンを別売しちゃうのに似てる!?しかしハイドロソルを生産するために精油が副産物でできるってこともあるんですっ。
精油は水溶性の成分が取り除かれています。ということは精油を抽出するには乾燥していた方が便利なんです。水分が抜けた植物なら水溶性の成分がなくなっていますからわざわざ取り除く必要もなく、しかもかさばりが少なくなり容量的にも一度にたくさんの精油ができます。逆にハイドロソルは水溶性の成分が必要なので、できるだけ新鮮で水分をたっぷり含んだ植物がいいのです。別の言い方をすれば、乾燥した植物は水溶性の成分を大きく失ってしまっているため、新鮮な植物に比べて品質的にも効率的にもハイドロソル生産に劣る、ということになります。
やや余談になりますが、植物の中でも特に花びらは痛みが早いため、精油を抽出するのにも収穫のあとすぐに新鮮なまま蒸留を始めてしまいます。精油では入手しにくいバラやネロリと言ったフローラルウォーターがハイドロソルでは一番一般的に出回っているのはこういったことが理由なのではないかなーと思います。(ちょっと気付いてうれしかったこと♪)
ちなみにハイドロソル専門に抽出している蒸留場もあり、こういった場所ではフローラルウォーターだけに限らず水分をたっぷり含んだ新鮮なミントやローズマリーなどのハーバルウォーターも蒸留し高品質のハイドロソルを効率よく生産しています。そして精油が副産物としてできます。贅沢な話だねー。
3.ハイドロソルの種類と使い方
種類はたくさんあります。蒸留抽出している精油なら、そのハイドロソルもあるでしょう。使い方もたくさんあります。ハイドロソルは自然化粧品に水の代用として使うことができます。(ただ石鹸作りで苛性ソーダを溶かすのに使うのはとても無意味でもったいない話だと思うけど。)種類によっては飲むこともできるし、肌に付けたり、スプレーしたり、使い方をどんどん自分で考えていかれる柔軟な製品だと思います。ハイドロソルの種類によって香りも効能も違いますから、それを調べていろいろ試してみるのが一番だと思います。個人的にはミントのハイドロソルのかき氷が食べてみたいなー。
4.ハイドロソルの欠点
なんだってそうだけど、100%完全に素敵なものなんてない。ハイドロソルの欠点はズバリ「腐りやすい」こと。水だからバクテリヤやカビが非常に繁殖しやすいです。そのためにファンシーな店で小瓶で売られているようなのは防腐剤を入れて販売している可能性もあります。ちなみレインボウメドウのメロディさんに聞いたら、ローズウォーターとネロリだけしか販売しないのは、その二つのみが防腐剤なしでも自らの成分で抗菌作用があるからだそうです。
それでも冷蔵保存、容器の扱いには気を付ける、できるだけ早く使い切る、ということが大切だと思います。こういうことを書くと「どれくらいなら大丈夫なの?3ヵ月?半年?」などと思う人もいるでしょう。それは数字で表わすものではなく、「見て腐ってるとき、臭いを嗅いで腐ってるとき」です。

参考文献:
Jeanne Rose "375 Essential Oils and Hydrosols" Frog Ltd.,1999
著者はアロマだけでなくハーブでも名の知れた人です。数多くある著書の中でも去年出版されたこの本はかなり評判の良い本。最近ではハイドロソルの提唱者として活躍しています。来年はエヌワイにワークショップに来るそうです。皆ツアー組んで来る?
Julia Lawless "The Illustrated Encyclopeida of Essential Oils" Element Books, 1995 (Barnes & Noble Edition)
これ一冊あると調べものが便利です。日本語でも出てると思います(「精油図鑑」とかなんとか?)。


後書き:
ハイロドソルって奥が深いー!濃縮され力強い精油とは違い、「水」というだけですごく繊細で洗練した感じがします~。香りも精油の縦に伸びる直線的な印象に対して、ハイドロソルはもっと横に広がるような面のような印象。(抽象的すぎ?)
ところで、ハイドロソルの和名を勝手に「ハーブ蒸留水」としてしまいましたが、正式名称は違うかも。
ハイドロソル 辞書で見つけた ヒドロゾル byたお

一年の締めくくり的マジメな挨拶
今年一年、このトピックを読んでくれたみなさん、協力してくれたみなさん、本当に本当にありがとうございました。きっと一人ではここまでできなかったことでしょう。正直言って「なんでこんなことしてるのかな?」って疑問が湧いてしまうこともあります。でも私の中の「知りたい&伝えたい」という知欲な虫が座敷わらしのように夜中にゴソゴソと出てきてトピックの提供をしてくれたり、タイピングの指を動かしてくれました。マイ知欲虫よ、ありがとう。(名前はタオチュー?)
ここでトピックにする内容及びHP内の情報はあくまでも入り口にすぎません。全てをここで詳細に書くことは無限にある情報の中でほとんど不可能であり無意味なことです。私は入り口を作りたい。そこからは皆さんに自分で考えたり選択してほしいんです。読み手が自分で考えたり決断するゆとりを与えずに、1から10まで絶対的に情報を提供するのは私のスタンスではありません。そして読み手の皆さんにも、情報を受け取るときには必ず自分で考えて決断してほしいと思っています。ひとりの意見や価値観、一冊の本、ひとつのウェブサイトや掲示板の投稿を鵜呑みにせず、そこをスタートにして自分の知欲虫にバランスのよい餌をあげていってください。そして伝える側になったときには、情報を与えるばかりでなく、受け取る側が自分で考えることができるゆとりも一緒に与えてほしいと強く望みます。それが私のHPの趣旨であり、石鹸作りを広げる目的でもあります。
Happy soaping!