Search This Blog(ブログ内検索)

Friday, September 01, 2000

Topic of the Month 2000年9月

9月のトピック
食わず嫌いなスティックブレンダーにチャレンジ

・・・・・ついに来てしまったよ。
冷蔵庫、マイクロウェーブ、コーヒーメーカー、コーヒーグラインダー、炊飯器、デジタルスケール、ジューサー、ミキサー、コンピュータ、プリンタ、ジップ、CDーR、ランプ、テレビ、ビデオ、電話ファックス、留守電、ドライヤー、アイロン、ギターアンプ、CDプレーヤー、キーボード、ラジカセ、・・・
そしてスティックブレンダー。
これらはうちにあるコードです。電気コード。世の中で一番嫌いなモノのひとつ。とにかく嫌い。だけど電池ならオーケーとかワイヤレスなら許すとか、そんなものでもないんだよね。
電気コードが増えたという私的ブツブツはさておき、食わず嫌いなブレンダー撹拌にちょうせぇ~ん(フォント9な気弱さ)。


1.スティックブレンダーって何ぞや?




言うより見るが早し。こんなのです。
<たお宅 Braun MR430HC Multiquick Delux >
お値段:29.99ドル + shipping(amazon.com) 

ブラウンマルチクイックは日本でも売っています。



2.ブレンダーは小バッチ向き

本や雑誌などで調べたことをまとめてみるとこんな感じでした。
  • トレースが早くでる。
  • 撹拌中に飛び散る危険性がある。
  • 小さいバッチサイズ向き。(だいたい2~3キロまでらしい)
  • 小さな空気の気泡がたくさん石鹸に入る。
  • 常温固形状の油脂がたくさん入っているオイルミックスを低温で撹拌するとニセトレースが出やすい。
  • 鹸化スピードが早いため、型に入れた後に温度が急上昇する。(特に熱をためやすい型の場合起こりやすい)
小さなバッチサイズ向きというのは強力な撹拌により熱が上昇するからです(と思う)。一般的には小さなバッチは量が少ないため、大きなバッチに比べ熱を失いやすいんです。特に冬場など外気温が低いときは小さいバッチを外気温に負けてしまいがち。だから鹸化熱の上昇を多少でも期待できるブレンダーは小バッチの味方ってことですね。ブレンダーは撹拌の手間が省けるばかりでなく、保温の点から考えてもこばっちソーパーにはありがたいお品なんです。しかし逆に日本の暑い夏にブレンダーを使えば温度が上がりすぎて分離したり火山口のような盛り上がりができたり、という影響も考えられます。
気温やバッチサイズの他に油脂の種類も大切です。ビーズワックスのように手で撹拌してもすぐにトレースが出るような油脂が配合されている場合、ブレンダーを使うと息するヒマもなく石鹸が固くなってしまいます。これじゃ十分に撹拌できていないし、オプションも何にも入れられないで終わってしまうよね。
トレースが早く出るのはいいけど、ブレンダーは一点集中型。手でまんべんなく全体をぐるぐるするのと訳が違います。つまり局部的にトレースが出ちゃうんですね。そこだけ見て「あ、できた」と思って型に入れてしまうと、鍋のはじっこの方で残された苛性ソーダが未反応のまま石鹸の中に顔を出してしまいます。だからブレンダー使っても結局は手でぐるぐるしないといけないんですね。ふふふ、マシンが人間にまさる訳がない~!やはり主役は自分の腕よっ!
BOTTOM LINE: バッチサイズ、気温、オイルの種類を検討してからブレンダーを使う。手での撹拌をメインにする。

3.スティックブレンダーの使い方

スガモンヌさんよりスティックブレンダーの使い方を教えて頂きました。スガモンヌさんの使用ブレンダーはブラウンのマルチクイック(MR 430 CA)というものです。他のブレンダーを使用する方は材質チェック&お手持ちの説明書をしっかり読んでくださいね。
スガモンヌ式「お手本にしたいスティックブレンダーの使い方」
1)最初に。ブレンダーを使用するのは、必ず手でトレースの感覚をつかんでからにしましょう。ブレンダーを用いると「トレースまであとどれくらいなのか」、「トレースとはどんな状態のことをいうのか」、また「どのあたりでストップするべきなのか」がつかみにくいのです。石鹸を作り始めてからの数バッチは「泡立て器のみ」で仕込んで、トレースを出すことに慣れてください(一生懸命混ぜるのも楽しいものです♪)。
2)ブレンダーは必ず刃等の金属部分がステンレスのものを購入しましょう(ブラウンのマルチクイック、無印良品のブレンダー等はOKです)。ボールはできればやや深めのものを用いたほうが安全です。撹ハン中は生地の高さが約10センチほど上がりますため、ボール一杯に生地を入れることは避けてください。またボールの周囲には必ず新聞紙などを敷いておきましょう。ブレンダーは意外と回転音が大きく、また勢いよく回るものです。最初に水の入ったボールなどに入れて回転させ、様子を見てみるのもオススメです。また、ブラウンの製品等はオプションで「泡立て器型のアタッチメント」が付いている場合もありますが、こちらは飛び散りますので用いません。
3)オイルと苛性ソーダの水溶液はできれば40度台で合わせることをオススメします。あまりに高い温度で合わせると、高い温度のまま保温することになり、分離の危険性が出てくるからです。また、ビーズワックスやステアリック・パームといったトレースを早めるものとの併用は絶対に避けましょう。生地が固まりすぎてしまいます。
4)オイルと苛性ソーダの水溶液を合わせました。いよいよブレンダーの登場です。しかし、ここであせってはいけません。最初の2~3分は必ず泡立て器のみで混ぜましょう! まだオイルと合わさっていない苛性ソーダ水が飛び散ると大変危険です! またオイルによってはブレンダーを用いるまでもなく、早々にトレースが出てしまうものもあります。苛性ソーダ水とオイルを合わせてからの最初の数分は、必ず泡立て器で混ぜて様子をみてください。
4)2~3分混ぜても生地がサラサラしていて「これはトレースまで時間がかかりそうだな」と思ったら今度こそ本当にブレンダーを取り出します。この際に絶対に絶対に! 守らなくてはいけない点が一つあります! これはブレンダーを使用するにあたって最も守らなくてはいけないことです!
必ずブレンダーを「ボールの底にしっかりと立てた状態にしてから」スイッチを入れてください!!!
スイッチを入れた状態で生地に突っ込んだり、生地に浅く突っ込んだ状態でスイッチを入れたりすると間違いなく飛び散ります!! スイッチを入れるのは必ず「ブレンダーをボールの底に立ててから」です! この辺りのことはブレンダーの説明書に書いてあると思いますので、使用前によく読んでおいてください。
5)第2のポイントです。
ブレンダーだけで混ぜるのではなく、必ず交互に泡立て器を用いて混ぜてください!!
片手にブレンダーを持ち10秒~15秒混ぜたら、今度は反対の手に持った泡立て器で20秒ほど混ぜる。これを繰り返してください。ブレンダーは、それが触れている箇所のみ重点的に鹸化が進んでしまいます。なので、マメに泡立て器に切り替えることで全体の混ざり具合を均一にします。また、泡立て器で混ぜることは気泡を潰す目的もあります。ブレンダーだけでトレースまで一気に仕上げてしまうのは、気泡のもと、偏った鹸化のもととなりますので避けてください。ブレンダーの連続使用時間は説明書にある時間(マルチクイックの場合は45秒)を守ってください。
6)ブレンダーを用いてから5分も過ぎると生地が重くなってきます(ケースによって違いはありますが、キャスティールでも約10~15分ほどでトレースが出てしまいます)。ゆるめのトレースが出たら、そこから先は泡立て器のみに切り替えて完全なトレースを出します。最後までブレンダーを用いてしまうと、オプションを入れている間にどんどん生地が固まってしまったり、生地が固くなりすぎて型に流しづらくなったりします。また、最後に泡立て器で混ぜることによって気泡を完全に潰す目的もあります。
7)気泡が入らないように型に流し込み、流し終わったら型を数回トントンと机か床に軽く叩きつけて気泡を潰します。
8)終わったら先端のアタッチメントをハズし、丁寧に洗います。特に刃の裏側は生地が残りやすいので丁寧に洗いましょう。
以上です! 大きなポイントは「絶対に底にしっかりつけてからスイッチを入れる」ことと「泡立て器と交互に用い、最初と最後は泡立て器のみで混ぜる」の2点です。ブレンダーでトレースを出す、というよりは「途中をブレンダーに助けてもらう」つもりで使うのがコツ!
ブレンダーはうまく使えばとても便利なものです。トレースが早いのはもちろんのこと、ボールに傷を付けませんし、年配の方でも石鹸作りを楽しむことができるようになります。鹸化途中の生地が入ったボールを長時間放置しておくこともなくなりますし、友達と一緒に型入れの作業まで楽しむことだって可能になります! がその反面、分離や気泡、飛び散りといった危険性も持ち合わせています。使用する場合は安全な使い方を守って、うまく使いこなしてください。また他者に勧める際は「ブレンダーだとトレースが早い!」ということだけではなく、必ずそのコツも一緒に伝授するようにしましょう!
ブレンダーだとあまりにトレースまでが早くて、石鹸作りが味気なくなってしまう点は否定できません。時にはゆったりとした時間を作って、泡立て器で一生懸命願いを込めながら(何の願い? 美肌!?)時間をかけて混ぜるのも楽しいかと思いますー!

4.スティックブレンダーで石鹸作り

こちらはうみすずめさんに教えて頂きました。うみすずめさんのサイト「石鹸雑記帳」には「単一油脂の石鹸作成と使用感」の実験から詳しいデータを集めたappendix 1-2というページがあります。今回はこの中の情報をうみすずめさんにまとめて教えて頂きました。以下のオイル、全て10分以内にトレースが出てるのがすごい~!保温中の温度などの情報もうみすずめさんのサイトを是非参考にしてくださいね。


ブレンダーは、手作り石鹸の助っ人さんとしては、とっても便利です。
ただ多くの人が言うように、石鹸作り自体が初めての人にはお薦め出来ません。
「トレース」がどういう状態なのか、判っていないとブレンダーを停止するタイミン グが掴めません。
そして、ブレンダーを使うとあまりにも早くトレースが出てしまう のです。
ブレンダー使用時における単一油脂のトレース状態までの時間を以下に示します。
条件>油脂類:各250g
NaOH:10%ディスカウント
水:35%
油脂と水酸化ナトリウム水溶液を混ぜるときの温度:40℃
使用した容器のサイズ:底の直径9cm、高さ約15cmの円筒形タッパー
油脂
ブレンダー
手動
オリーブ油
6
1
7*
キャノーラ油
5
1
6*
グレープシード油
3
0.5
3.5*
ごま油
8
2
10*
パーム油
2
2
4
ひまわり油
3
2
5
綿実油
8
3
11
 (単位・分)
私がやったときは以上のような結果になりました。
ただし、同じ種類の油を使っても、製造業者によって多少の違いはあると思います。
また、作成者が同じでも全く同じ石鹸がなかなか出来ないように、当然作成者による 違いはあると思いますので、
この結果が全てではありません、参考までにとどめてお いて下さい。
で、※のついている・いないのは何が違うかというと、保温箱内の気温が異なるので す。
※の方は40℃以下、ついていない方は40℃以上になりました。
この違いはどういう風に現れたかというと、※はジェル化しない、ついていないのは ジェル化しました。
どれも27℃以上の真夏の暑い日に作ったにも関わらず、でした。
(オリーブのみ例外でジェル化しました。しかしこの時期では珍しく分厚いソーダ灰 が出ました)
どうしてこのような違いが現れたのか考えたところ、今のところ撹拌時間が短すぎた のではないかと考えています。
私は、ブレンダーでかき混ぜすぎという状態にはなったことないのですが、逆に分離 する程じゃないけど、
ほんの少しかき混ぜ方が足りなかったのではないかと思ってい ます。
つまり、トレース状態になったけれど、ジェル化するまでの発熱に必要なだけの反応 ではなかった、のではないかと
(私の中で、勝手に「トレースが若かった」と言って います)。
油脂類にもよると思うのですが、鹸化反応に十分な撹拌とある程度の反応時間がある のではないかな?とも思ってます。
上記の表でジェル化しなかったものは、トレースが出た後も、トレース状態に応じて、
少なくともあと1~2分は手動で調節しながら、撹拌した方が良かったのでは、と思 います。
あと、容器によっても時間が変わると思います。
私の使用した容器だと、底面積は狭いので、ブレンダーだけでも、ほぼ全体が撹拌さ れます(それでも手動の撹拌が必要です)。
別件でボウルでやってみたところ、ブレンダー周辺部しか撹拌されず、ボウルの外側 はほとんど撹拌されていませんでした。
表面上、トレースが出たと思っても、手動で かき混ぜるとトレースが消えることもあります。
特に、このような容器であれば、ちゃんと手動で撹拌する必要があると思います。
ブレンダーが不向きな油脂の条件は、何と言っても、急にトレースが出る油脂。
トレースが出るまで、ブレンダーで5分以上かかっている油脂には、暑い季節や台所占領時間を取られたくない人には、
とっても有効な便利グッズです(例:オリーブ、ごま、綿実など)。
しかし、ブレンダー使用後3分以内でトレースの出る油脂類はかなり注意が必要です。
特に、米ぬかと牛脂。要注意どころか、ブレンダー使用禁止と言ってもいいほど急激にトレースが出ます。
総合評価としては、ブレンダーは脇役で光るものであって、丁寧な石鹸を作るなら、 やっぱり手動の方が良いのではないか、と思います。

5.試してみたよ。

ブレンダー使用をまずは水に入れて練習してみました。それからオイルのみで練習してみました。それから石鹸生地で使ってみました。ブレンダーがオンの状態で写真を取るのはちょっぴりコワイので今回は水中で作動する写真のみを取りました。実際は石鹸生地の方が液体の盛り上がりもあるし、確実に飛び散りの可能性もあります!この写真よりもっと激しいものを想像しておいてくださいねっ。(ブレンダーは容器の底にくっつけて使います)
今回はアボカドオイル80%&パーム核20%というレシピを使いました。もうすぐ誕生する姪or甥のプレゼントでーす。とりあえずソフトオイル80%ということで、手でぐるぐるしたら1時間くらいかかるかなーと思います。ブレンダーを使う前に手で3分ぐるぐるしました。いい感じで生地が均一にクリーム色になってから、「ブレンダー3秒&手で混ぜる10秒」という作業を6分続けたらライトなトレースが出ました。ここから3~5分くらい再び手で撹拌をしました。最後に型に入れて終了。なんともあっさりした石鹸作りでした。合計15分くらいだね。それにしても気泡だらけだったっ!これだけ泡が入ればボリュームも増える。やはり大きな鍋やボールの中で撹拌するのはとっても大切だね。
ブレンダーの掃除はちょっと面倒です。まずはアタッチメントの部分を本体からはずし、石鹸生地を拭き取るのにペーパータオルで手を怪我しないように拭き取りました。それからお酢でシュッシュとして再びペーパータオルで拭き取ったら、綿棒をお酢で湿らせブレードの裏など細かい部分を拭いていきます。そして最後に石鹸を泡立てたスポンジで洗って完了。これもちょっと洗いにくいです。
ということでブレンダー体験、あっさり終了。



<後書き> まずはクレジットから:
参考資料は
The Soapmaker's Companion. Susan M. Cavitch. 1997 Storey Publishing (pp.171-173)
Essentially Soap. Dr. Robert S. McDaniel. 2000 Krause Publications (p. 35, p. 55)
"Mixing and soaping"ハ Dr. R. S. McDaniel, an article appeared in The Saponifier, vol.2, issue 4. January 2000 (pp. 20-21)
3. スガモンヌさん、ブレンダーの使い方情報ありがとう!
4. うみすずめさん、ブレンダー使用情報ありがとう!
やれやれ、今月は大変だったよ。でも終わった。これで夏も終わり。
ブレンダーを使う人は苛性ソーダを扱うのと同じくらい十分な配慮をして使ってくださいね。