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Saturday, July 01, 2000

Topic of the Month 2000年7月

7月のトピック
リキッドソープ・パート1~とりあえず作ってみたよ~

このHPを開設した当初から幾度となく液体石鹸の作り方についてメールで問い合わせが来ていました。それを「まだ作ったことがないので今度作ったらお知らせします」なんて調子の良いレスを送ったまま何か月もたってしまった!「今度っていつ?」と思いながら辛抱強く待ってくれたみなさま、遅くなり申し訳ありませんでした!今ここにたお式いい加減リキッドソープの作り方を御披露目させて頂きますっ!


*リキッドな前置き(興味の無い人は飛ばしてください)

液体石鹸っていうと薬品も違うしなんだか特別な感じがする・・・もしかしてすごく難しいのかも!?そう思ったので、まずは情報収集のため今年の4月に発売された液体石鹸の本を購入しました:
"Making Natural Liquid Soaps" Catherine Failor著 Storey Books出版 2000年
著者はもともと透明石鹸の本を出版し、透明石鹸に使えるモチーフ石鹸型を販売するトーメーソーパーです。そんなソーパーの出した液体石鹸の本を唯一の情報源としてリキッド宣戦布告をしました。しかし!!この本は作り方の手順や計算に関してやけに事細かい!しかも英語も読みにくぅー(自分のせいかも・・)。とりあずパラパラ読んでみると、この本では以下のことが大事だと書いてありました。
(1)過剰油脂は液体石鹸を不透明にするので過剰アルカリで石鹸を作る。そしてクエン酸やほう酸などで最後に中和する。
(2)ココナツオイルはその水溶性や泡立ち、トレースの早さ、透明度という点において液体石鹸にとって一番大切なメインオイルである。
(3)作り方はHP法が基本。石鹸ペーストを作り水で薄めて液体石鹸にするペースト法とアルコールやグリセリンなどを加えて鹸化させていくアルコール法がある。前者はかきまぜる手間がかかり、後者はかき混ぜる手間は無い。
(4)液体石鹸とは本来さらさらしている。それにとろみをつけるにはほう酸を使う。
(5)オリーブオイルなどのソフトオイルはトレースが遅くなり透明度が出にくい。
(6)基本的に後からオプションでスーパーファットはしない。スーパーファットが唯一可能なオイルはTurkey red oil= sulfonated castor oil(たぶん日本語ではスルホン化されたひまし油とかなんとか言うと思う)と呼ばれるもので水溶性なのが特徴。
本を読んで思ったこと:なんで透明が大切なんだあああー!?透明の何がメリットなんだああああああー!?フェイラーによると液体石鹸制作における基本原則=ゴールデン・ルールは「中和されない脂肪酸は不透明の原因」だそうです(p. 21)。へ、それだけ?液体を透明にすることが原則?そんなものがゴールデン・ルール?結局この本は途中で読むのをやめた・・・。
「透明」、そのメリットは?。さっぱり解せない私はそれを無視することに決めました。だって透明にさえしなきゃ、ずいぶんラクチンそうだし。例えば固形石鹸なら透明っていうのは美的理由以外には何のメリットもないし。きっと液体でも同じかなー、なんて勝手な憶測をしてみました。そんな訳で上記のポイントを以下のように勝手にアレンジしました。
(1)リキッド・ビギナーなので簡単でトレースが早そうなレシピを作る。ココナツオイルのみを使用し、鹸化率100%にする。過剰油脂も過剰アリカリもしない。誤差はあるだろうが、なんとかなるさ。
(2)とりあえずほう酸は加える。万が一アルカリが多くなった場合に中和剤となるのと、液体石鹸にとろみがつくからね。
(3)ペースト法にする。HP法で苛性ソーダの代わりに苛性カリを使用する、というお気軽な感じが気に入った。アルコールは入れたくない。
(4)スーパーファットしちゃう。でも入れるのはグリセリン。だから厳密にはスーパーグリセリン。フフ、それなら水溶性だろう。ちなみグリセリンを加えることで泡立ちに安定感も出る、とフェイラーの本に書いてあったよ。そして・・・

たおのゴールデン・ルール:透明じゃなくたっていいんだい!・・・そしてこのゴールデン・ルールが実に意外な展開を導くのであった・・・



*リキッドな道具

基本的には固形石鹸を作るCP法と同じです。ただ今回はHP法なので湯煎にします。だから湯煎用の鍋が必要です。あとは最後にペーストを希釈するときも鍋が必要です。


*リキッドな警告

苛性カリも苛性ソーダ同様、劇薬です!取扱&保管には十分すぎるほど注意してください。
(1)自分の身を守る服装&小道具を身に付けて制作すること。エプロン、長袖&長ズボン、手袋、眼鏡やゴーグルなど目を保護するものもあった方がよいでしょう。
(2)万が一苛性カリ水をこぼしたり飛び散った場合に備え、新聞紙やビニールシートで床やキッチンカウンターを覆ってから制作すること。中和用のお酢を霧吹きに入れておいておくと良いでしょう。
(3)刺激のある蒸気が出るのをできる限り防ぐため、苛性カリは水の中にゆっくり加えること。
(4)ペットや子供など他の家族や同居人に迷惑がかからないように保管すること。
(5)液体石鹸はHP法です。約3時間ほどコンロの火を使います。くれぐれも火事にならないように気を付けてください!4~5時間の時間的&精神的余裕が無い場合は危ないですから作らないでください。
(6)石鹸作り自体が始めての人はまずCP法で固形石鹸を作る練習をしてみてください。以下の作り方は石鹸作りになじみがあることを前提に書いています。ですから基本的な情報などを抜かして書いている為、このページを参考に始めての石鹸作りで液体石鹸を作るのはおすすめしないです。


*リキッドなレシピ

本のレシピはそのまま使えないので、(ほとんど同じかもしれないけど)自分でレシピ作ってみました。グラムのバッチサイズを決めて、鹸化価計算して、ほう酸の量とか水の量とかはややテキトーです。過剰アルカリや過剰油脂をしないアバウトながらも鹸化率100%の石鹸です。(オンライン自動計算機を使った場合とは若干数字が違います。)

<ココナツオイル・リキッドソープ>


リキッドの素
(石鹸ペーストを作ります)


水 480g
苛性カリ 133gココナツオイル 500g


希釈
(石鹸ペーストを薄めます)


ほう酸 10g
水 20gリキッドの素 250g
水 250g
グリセリン 大さじ1~2

*ほう酸は本を見ながら入れただけです。実際には使わないでください。('09/10/27)




*リキッドな作り方

<リキッドの素>
(1)水の重さをはかる。苛性カリの重さをはかる。そして苛性カリをゆっくりと水の中に加え混ぜて溶かす。ボールに水をはり、苛性カリ水をボールの中で60度くらいまで冷ます。
*何度も言うけど苛性カリ気を付けて扱ってくださいね。
(2)ココナツオイルの重さをはかる。弱火にかけ70度くらいまで暖める。
*温度はフェイラーの本を参考にしました。
(3)苛性カリ水をゆっくりココナツオイルに混ぜ撹拌する。
*苛性カリを使った場合のトレースは苛性ソーダの場合と違います。なーんにも変化しないさらさらな状態が続き「あれれ?どうなっちゃうのかな?」と思っているといきなりドロっと重たくなるんです!トレースが出た生地はかなり重たくケーキの生地みたいなもったり感に近いものがあります。私が作った時は、しばらく混ぜても何も変化が見られず、次にいきなり石鹸の泡が出てきて「うぁ!撹拌するそばから泡だってるぅー!」と思ったらそのすぐ後でいきなりトレース・アタックが入りました。すごい新鮮、これ!苛性ソーダの徐々にもったりしてくるのとは一味違うギャンブル性の高いトレースの出方です、ふふふ。トレースは結局15分か20分くらいで出たような気がするよ。早ーい!さすがココナツオイルだね!
(4)トレースが出たら湯煎開始。下の湯が弱くフツフツしてる状態で3時間。鍋にフタもしてみた。30分ごとに生地を動かして熱の配分を均等にしてあげた。
*実は私の鍋は「湯煎」にならないのです。湯煎用鍋と石鹸生地の入った鍋は大きさが同じくらいなのでぴったり重なってるだけで、底から蒸気で暖められるという感じ。逆にそれが良かったりして!?構造的には蒸し器っぽいよね。興味のある人はお試しあれ。
(5)湯煎を始めて約2時間くらいしたら石鹸生地がジェル化してくる。この時には生地はもうすっかり固めのペースト状。更に1時間湯煎を続け、合計3時間で全体的に透明感のあるペースト「リキッドの素」ができあがり。
*私がこれを「リキッドの素」と呼ぶのは2つの理由があるのです。ひとつはこれを水で薄めて液体石鹸にするから。もうひとつはこの「素」を次回のバッチを作る際に少量加えるとトレースが早まりリキッドソープの「スターター」となるんです。(これってヨーグルトの作り方にちょっと似てるよね。)500gバッチの場合、苛性カリ水をオイルに加え撹拌を始めたらスターターを20ー30gくらい加えてあげると、どんどん撹拌が進むらしい。「リキッドの素」は長期保存可能です。冷蔵や冷凍保存もオーケー。

<希釈>
(1)リキッドの素と水を鍋に入れ火にかける。リキッドの素をつぶすようにしながら水に溶かしていく。
*リキッドの素を溶かすのは辛抱が必要です。ぐちゃぐちゃかき混ぜるとどんどん泡が立ってしまいます。ほっといても自然に溶けるので干渉しすぎないことです。それから沸騰しないように気を付けること。沸騰するとどんどん泡立ちます。
(2)リキッドの素を溶かしている間にほう酸水を作る。耐熱容器にほう酸を入れ、熱湯を加える。かき混ぜて溶かす。
(3)リキッドの素が溶けたら火を止め、ほう酸水を加えてまんべんなく混ぜる。グリセリンも加える。冷ます。
*香りを付けるなら液体石鹸が冷めてきた頃に入れた方が揮発が少なくてすみます。
(4)使う。喜ぶ。何でも洗ってみる。自慢する。


*リキッドな使用感

ココナツオイル100%。すっごーいすっごーい泡立つなぁ~!!!グリセリンを入れないで使ったらややドライだったけど、グリセリンを入れたらしっとりになったよ。洗髪に使ったら髪サラサラで髪がすごく軽くなった感じだった。顔も体も洗ってみたけど、満足。お皿も洗ってみたよ。ほんとにちょっとだけをスポンジにつけたらものすごい泡が立った!そして水切れがとってもよかった。
しかしここで意外な事実を発見!透明感を出すことを全く無視して作ったら『最高に透明なリキッドソープ』になった!
石鹸の向こうが見えるクリスタルクリア・リキッドソープ!フェイラーのあの苦労は一体何ぞや!?


後書き:リキッドソープおもしろかったよ。今回はココナツオイルだけで作ったので来月はもう少し別のオイルも使ってみます。レシピ計算法や苛性カリの鹸化価は来月掲載しまーす。今月も 読んで頂き ありがとう