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Monday, October 01, 2012

素材について考える

 随分昔に、星セント・ルイスという漫才コンビがいたのを覚えている方はいますか?長身のセントと小さなルイス。「田園調布に家が建つ」と聞いたら思い出す方もいるでしょうか。彼らの漫才の中で、人間をお金に換算すると・・というのがありました。それによると、人間の体は炭素と脂肪と鉄分とリンでできている。炭素で鉛筆の芯が9000本、脂肪から石けんが7個、鉄分から釘が1本、リンからはマッチの頭が2200本取れるのだとか。これをお金に換算すると7000円、でもルイスは小さいから5000円。そんな体に生命保険一千万円もかけやがって!とセントがルイスの後頭部をたたく。そういうネタでした。

 このネタの真偽のほどはわかりませんが、人間は炭素と脂肪と鉄分とリンでできていると聞いたとき、すごく不思議な感じがしたのを覚えています。自分という特別感のある存在がなくなり、それこそマッチ箱の中のマッチ1本にでもなった気分でした。友達のEちゃんもSちゃんも、お父さんもお母さんも、どの人もみんなマッチになった気がしました。

 なんでこんなことを書くのかというと、石けんの素材について考えるときに、よくこのネタを思い出すからです。
 オリーブオイルはオレイン酸、リノール酸、パルミチン酸などを含み・・とか、○○の主成分は△△で・・なんて文章を見ると、「人間の体は炭素と脂肪と・・」と似てるなあと思うのです。石けんを作る上で、素材が何でできているかを知るのは大切な情報です。それを知ることで、納得できることがたくさんあります。でもそれが唯一の情報かというとそうではないんですね。
 例えば、私は炭素からできています(笑)これで私の一面について知ったことにはなりますが、そのことだけでは私とうまくつき合うことはできません。生い立ちだったり、経験だったり、好き嫌いだったりを知っておいた方が、私という人間の扱い方がよくわかります。同じように、石けん作りをするときに、その生い立ちや体験を理解し、何が好きで何が嫌いかを察してあげることができれば、より素材を理解し、うまく扱えると思うのです。

 オリーブオイルを例に取ると、温暖で乾燥した地域を好んで暮らしています。暑さや寒さなど極端な温度は苦手。石けん作りでも、オリーブを高配合使うときは、生地温が高すぎれば柔らかくなったり分離したり痛んだり、低すぎれば鹸化が進みにくく、かたまりにくくなります。オリーブオイルをうまく石けんにするには、適度な温度で保温してあげることがよいように思います。
 それに乾燥した土地で育つ植物ですから、水はあまり好きではないように思います。オリーブオイルをたくさん使ったレシピで水分がしみ出してしまうのは、きっと水が嫌いなんだろうと思っています。水が多すぎると、トレースも出にくく、生地温があがったときに分離しやすくなります。またソープディッシュの上で水につかっていると、ネバネバしてくずれてしまうのも特徴です。オリーブをたっぷり入れる石けんは、苦手な水を控えめに入れることで、こういったトラブルを減らすことができます。
 またオリーブの木はゆっくり時間をかけて成長する植物です。鹸化反応もゆっくりですから、無理に急かしたりして作るより、時間をかけてあげる方がよい石けんができるように思います。

 ココナツオイルはどうでしょう?トロピカルなエリアで、海があったり、雨がたっぷりと降ったり、ココナツは水に囲まれた環境で育つような気がします。そのせいか、ココナツオイルは油なのに水が大好きです。液体石けんなど水に溶かして使うときには非常によい油脂です。反面、水と離ればなれになるのが嫌なのか、水分を飛ばしにくい傾向にあります。夏の湿気の高い時期にココナツオイルを使うなら、水分を減らして作るなどして対策を練らないと、いつまでも乾燥しません。

 こんなふうに育った環境や好みを考えていくと、石けん作りのヒントになることがたくさんわかります。もうすこし細かくみていくと、同じココナツでもフィリピン生まれとマレーシア生まれではここが違う・・なんてことに気付くかもしれませんね。そんな観察力を持てるようになりたいものです。
 
 有効成分などを考えながら素材を小さく小さくみていく方法もひとつですが、その植物の育った環境をふりかえるなど大きくみることも役立つはずです。ぜひ試してみてくださいね。