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Saturday, January 26, 2008

サラダ野菜と雑草

本が好きなのになかなか読めないという状態が数年続いていたため、今年の抱負は「読書」。いつでも本を身近に置いておく、読めそうな瞬間があれば読む、というようにしています。今は、昨年買いためた植物関連の本を少しづつ読み進めているところです。1月に読んだのは大場秀章著「サラダ野菜の植物史」(新潮選書)と「柳宗民の雑草ノオト」(毎日新聞社)。サラダ野菜と雑草、どちらも身近な存在すぎて、あらためて「植物」として意識することがなかっただけに、とても新鮮な気持ちになりました。


「サラダ野菜の植物史」はサラダでよく使われる、または今後使われてゆくであろう野菜をキク科、セリ科、アブラナ科などに分類し、各野菜がどのように生まれ、どのような経緯で食卓に登場するに至ったかなどが書かれています。私は、ゴボウがキク科、アスパラがユリ科とか、そういうレベルでも驚いてしまうほど野菜知識が低かったので、この本は第一章からへぇー!なるほど!と感心することばかりでした。オレンジ色の人参が登場したのは18世紀になってからで、それ以前は白、黄色、褐色、紫などが主流だった、タマネギは防腐剤としてミイラを作るときに腔所に詰められた、などなど身近な野菜が昔は全然違う姿をしていたり、違う扱われ方をしていたのを知ると不思議な気持ちになります。なんというか、よく知っていると思っていた友人の意外な過去を知らされた!って感じでしょうか。

また、人類は進化の過程で何を食べてきたのか・食の嗜好はいつできたのかという話しで、人間が生存競争で生き残るために苦味のある植物を好むようになったのではないか、という話しも興味深いものでした。
草食動物は一般的に苦味成分を含む植物を好まないらしく、砂漠や高山など極限環境における生産性の低い地域を見てみても、苦味成分を持つ植物を食べないのだそうです。しかし、人間はむしろ苦味成分を好んで食べるようなところがあります。これは食べられる植物が限られている中で、得意技を持たない人類が他の動物と競合するために、頭脳を使い、他の動物が食べないような野生植物を食べることを覚えたのではないか、と書いています。そしてこれは人類進化の過程だけでなく、飢饉など食糧難のときにも食べられる野生植物を探す努力がされている、とありました。
お腹が好いたらなんか食べられる草を。苦ければ苦みが減るように工夫して、かたければ柔らかくなるように工夫して。というのはとても納得がいきます。それと関係して、近年の栽培野菜や果物の甘みがどんどん増え、本来の植物の持つ苦味や青臭さなどが消されていっているのは、必要がなければ苦味は避けたいという動物的感覚が反映されているのかなあとも思いました。個人的には野菜や果物の糖度を不自然なまでに高くしてほしくはないですけどね。


「柳宗民の雑草ノオト」は、民芸運動の創始者・柳宗悦を父に持つ園芸研究家・柳宗民氏が60種類の季節の雑草について綴った本です。この本は「春」「夏」「秋」の3部で構成されているので、私は季節にあわせて少しづつ読む計画でいます。「冬」の章はありませんが、「春」のはじめには雑草は七草がゆでおなじみのナズナやハコベなどが紹介されているので、ひとまずそこだけ読みました。

ナズナは名前は知っていたけど、それがどんな植物なのか知りませんでした。しかし本のイラストを見てビックリ!あまりにも馴染み深い植物がそこにあったです。それは子供の頃に小さなハート型の葉っぱをシャラシャラとならして遊んだ草です。アメリカでもよく見かけるし、英語名のShepherd's purseというのは知っていたのですが、これがナズナのことだったとは!
ハコベは、昔は葉を乾燥させて粉末にしたものを塩と混ぜ、歯磨き粉として使っていたとか、歯痛止めとして使用されていたこともあるなど、興味深い話も書かれていました。ハコベは英語でChickweed。実はこの植物も英語名の方になじみがあり、これがハコベのことだったのか!と、あとから和名を知った植物です。かゆみや炎症などにもよいと言われている薬草で、実は一時こっそりと、かなりこの植物にはまっていた時期があります。ナズナ同様、ハコベも七草のイメージが強いかもしれませんが、手作りのオーラルケア用品や石けんなど活用すると楽しいと思います。

「雑草ノオト」のイラストは、三品隆司氏の植物画。ため息が出るほど美しいです。やっぱりこういう本には写真ではなく、美しいイラストがぴったりです。そして、丁寧に書かれた文章と丁寧に書かれたイラストをじっくり楽しむためにも、一気読みではなく、ちょっとづつちょっとづつ丁寧に読むのがいいんですよねぇ〜。