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Friday, August 01, 2003

Topic of the Month 2003年8月

8月のトピック
~オイルについて思うこと~

石けん作りをしてゆくと、「オリーブオイルはしっとり」「ココナツオイルは泡立ちがよい」など
オイルに関する知識や理解が深くなってきますよね。
だけどそれが逆に固定観念になって、オイルの使い方を限定してしまうのでは?
今月は、そんな疑問からスタートして、私が考えていることを私的に私的に書いてみました。
これは私的な考えを書いただけですから、「答え」ではありませんよ。
そのことだけ頭のすみに置いてから、どうぞお読みください。


1.「ココアバター入り石けんは重い」という固定観念
ココアバターはそのまま肌に塗ってもわかるように、かなりリッチな油脂です。そのせいで、ココアバターを加えて作った石けんは超しっとり、夏に使うにはちょっとヘビーかな、と思っている方もたくさんいるでしょう。
では夏向けにはならないのかというと、そんなことはないと思います。ココアバターは他の保湿系の油脂よりも何倍もしっとりしていますから、他の保湿オイルと組み合わせると「しっとり+超しっとり=めちゃめちゃしっとり」という足し算になりますね!もちろん配合する割合にもよりますが、例えばソフトオイルを40%入れた石けんにココアバターを配合したものは、重たいと感じる石けんができるような気がします。
では、どうしたらココアバター入りの重くない石けんができるかというと、ソフトオイルを使わないことです。ココアバターは少量(例えばバッチサイズの5~10%程度)でしっかりと保湿感を出せるので、比較的高価なソフトオイルを40%も50%も入れるより、かなり経済的なレシピになりますよ。そして保湿の度合は、ココアバターの分量のみで調節すればいいので、ソフトオイルと組み合わせるよりも、レシピが組み立てやすいと思います。残りはパームとココナツを使いますが、ソフトオイルが無い分、必然的に分量が増えますから、結果として硬くて溶けにくく、泡立ち&泡持ちのよい石けんになると思います。
ソフトオイル抜きココアバター石けん、ぜひぜひお試しあれ!

2.「ココナツオイルは刺激がある」という固定観念
ココナツオイルは、人によっては合わない場合があるので、これは固定観念というよりは事実でしょう。ただ、「ココナツオイル=刺激」と頭ごなしに決め付けてしまうのは間違っていると思います。まず最初に、「刺激がある」という表現がときとして曖昧に使われている気がします。そして次に、ココナツオイルの刺激物がいつも含まれているかというと、必ずしもそうではないからです。以下、このふたつの点を考えてみました。
・刺激とは?
「刺激」の解釈のひとつとして「乾燥=刺激」と混同している場合があるように思います。例えば、ココナツオイルは皮脂を取りすぎて肌への刺激となる、というような表現は、ココナツオイルの洗浄力が肌の乾燥へつながるという意味なのでしょう。一般的には、乾燥を防ぐために、配合を20%や30%以下にとどめる方法が使われているようですが、乾燥だけが問題ならば、これに限定する必要はありません。例えば、ココナツオイルは50%配合していても、精製水の代わりにミルクを使えば、しっとりした石けんになります。メリンダ・コスのhandmade soap bookの中には、ココナツオイルとココアバターの配合が4:1のレシピがありますが、とてもしっとりした洗い心地の石けんになりましたよ。乾燥肌の私が冬に使っても満足のレシピでした。(ただこの石けんは硬い割りに減りが早いので、私ならここにパーム/ラードを入れてしまうかも。)どちらにしても、洗浄により皮脂が取られ過ぎないように、少し重めに過剰油脂を加えるやり方です。
もうひとつの「刺激」の解釈としては、ココナツオイルが肌に合わない場合です。これはカプリル酸/カプリン酸というココナツオイルに含まれる脂肪酸が肌に合わず、結果として刺激を感じる、ということですね。肌に合わないのは仕方がないので、この場合は、ココナツオイルを使わないか極力控えるしかないでしょう。
しかし、仮に肌に合わない人でも、全てのココナツオイルが刺激かというとそうではありません。ココナツオイルにはいろんな種類があり、例えば、アメリカで売られているココナツオイルの中には、"RBD"と書かれているものがあります。これは"refined, bleached, deodorized"の略で、精製、漂白、脱臭をしたココナツオイルという意味です。このタイプのココナツオイルは、精製のときにカプリル酸/カプリン酸が抜かれているんですよ。もしカプリル/カプリン酸が刺激の原因となるならば、精製されたココナツオイルでは刺激を感じないはずです。ちなみに日本で販売されているココナツオイルは、カプリル酸/カプリン酸が抜かれているものはないようなので、もしチャンスがあれば、アメリカのRBDココナツオイルと使い比べてはいかがでしょうか?
*2004年9月現在 RBDココナツオイルを取り扱っているショップは日本でもあります。
RBDココナツオイルは、(おそらく石けん用として)フィリピンやマレーシアで精製され、アメリカに輸入されたものだと思います。フィリピンのココナツオイル会社のサイトを見ていたら、ココナツオイルの精製過程を図で示しているものがあり、カプリル酸/カプリン酸が除去されていました。抜かれた脂肪酸の方は、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、またはフラクショネーティッドココナツオイルという名前で、エモリアント剤として数多くの化粧品類に使用されています。
石けんでは刺激性があると言われているカプリル酸/カプリン酸ですが、化粧品類の使用においては問題がないようです。例えば、フレグランスジャーナル社「化粧品油脂の科学」では「毒性が低く刺激性がないので、外用医薬品の軟膏基剤としても用いられる。」と書かれています(p106)。また、"A consumer's Dictionary of Cosmetic Ingredients"では、カプリル酸、カプリン酸ともに" No Known Toxicity"(知られている毒性はなし)と表記されています。
ココナツオイルってすごく馴染みがあるようだけど、実は意外に知らないことが多いですよね。
私も少し調べものしただけで、書き切れないほどたくさんのバリエーションを発見して、頭を抱えてしまいました。ここに記したのはほんの一部です。でももう体力が続かないので、ここでいきなり終わります。

後書き
もっと書こうと思ったけど、もう限界~。
結局、ふたつの油脂だけ書いて、すでにへろへろです。
またいずれ機会を見て、続編を書こうと思います。
トピックに協力してくださったゆみこさん。心から感謝します。