Thursday, June 03, 2010

温度のはなし(3)

前回は撹拌を始める前までの温度についてお話ししました。

今回は撹拌を始めてからの温度調節についてお話します。毎度同じことを言いますが、あくまでも私の体験をもとにしていることです。状況が違えば方法も変わります。これがTHE正解ではありません。

苛性ソーダ水をオイルに入れて撹拌を始めると、(特別な状況をのぞき)自然の成り行きとして鹸化により熱が上がります。それが「思った通り」のときもあれば、「思ったより上がってしまう」こともあれば、「思ったほど上がらないこと」もあるわけです。



思った通りなら何も問題はありません。思った通りにならないときは撹拌しながら温度を調節します。温度を調節すれば、直に反応に影響します。もちろん鹸化反応は温度だけでなく、撹拌方法やオプション材料によって影響を受けますから、それらも考慮に入れて温度を調節していきます。複雑なように思えますが、上げるか下げるかなので、いたってシンプルです。

私は撹拌をしながらこまめに鍋(またはボウル)の外側を触って、温度の変化をチェックしています。理想よりは低めの温度で始める事が多いので、撹拌を始めると生地温は「思ったほど上がらない」ようになっています。冬の寒い時期に作って「上がるどころか下がってしまった」というケースもあります。そこで必要な分だけ温度を上げるのですが、前の回に書いたように温度を上げる方法はとても簡単です。とろ火にかけ、生地の様子(温度)をチェックしながら温めるだけです。

逆に生地温が「思ったより上がってしまう」場合もあります。大抵は急いでいたとき、バッチサイズが大きいとき、オプションの反応がよかったときなどです。この場合は窓の近くで冷ましながら撹拌したりもしますが、反応しているものを無理に抑え込むのも可哀想(笑)なので、無理な冷却は避けています。トレースらしきものが出たら速やかに型入れして、保温の段階で温度調節するようにしています。
反応が暴走気味の場合は、冷水や冷蔵庫などで冷やす方法も試したことがありますが、あまり好みの感じにはなりませんでした。過剰反応を抑えたいときは、冷やすのではなく、うまく放熱してあげる方が、仕上がりがきれいでした。バッチまるごと冷やしたりせず、モチーフモールドなどに生地を小分けにして型入れするのです。保温はしないか、しても弱めに。状況にあわせ調節します。これだと放熱により自然に温度が下がるので、分離もしにくくきれいに仕上がりやすいです。
反応が急激に進む中で、いきなり型を変更するのも大変でしょうから、温度が上がりやすいオプションを使う場合は、手元に緊急対策用として小分けできる型を置いておくとよいでしょう。

撹拌中の温度調節は意図的なこともあります。これは上のように結果に対して対応するのではなく、生地の温度変化を予想してその対策を取るときです。

例えば、レイヤー、マーブルなど生地を分けたり、別容器に移したりする場合、オプションでモザイク石けんなどが入る場合。そしてモチーフモールドに型入れする場合、などなど。デザインなどの作業により生地温がぐんと下がると思うときは、撹拌途中で温度を上げておきます。

次に、温度が上がるだろうと思う場合。ブレンダーを使うとき、反応の早そうなオプションを入れるとき、などなど。これは開始温度で調節しておくと楽ですが、ある程度反応熱が上がってしまってから対処しなければならないときもあります。随分温度が上がってきたけど、このままはちみつ入れたら危ないな・・というようなときの温度調節の方法です。この場合は、冷やすこともできますが、急激な温度変化に晒して反応を抑えるのはできるだけ避けたいので、避けます(笑)撹拌の真っ最中という事で、生地を小分けにして放熱することも現実的ではありません。ではどうするかというと、過剰反応を起こしそうなオプションをちょっとづつ入れることで時間かせぎをします。はちみつを大さじ1入れるとしたら、温度が上がりかけてきたくらいから、小さじ1/4とか1/2づつ、少し時間を開けながら入れていきます。これだと一気に反応が出ることはありません。ちょっとづつ入れると石けん生地も気付かないのか、あれ?何か変わった?(笑)くらいの感じになり、暴走を防ぐことができます。

ちなみにフレグランスオイルも、入れたらいきなり生地がボテボテ固まってしまうものがありますよね。これをシージング(seizing)と言います。新しいフレグランスオイルを試すときはシージングを起こすかわからないので、トレースが出る前から、小さじ1/4づつ入れて生地の様子を見る、数分したらさらに1/4加えて変化を見る、というようにしています。いきなり小さじ1、2杯入れるとシージングを起こすフレグランスオイルでも、少量づつ入れると、反応が弱いので、急なシージングを防げます。これも温度と同様に、過剰反応を予防するための方法です。