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Sunday, June 13, 2010

肌を洗う・髪を洗う

しばらく前の石けん講座でスタッフの方に「手作り石けんで髪は洗えますか?」と質問を受けました。これは私が答えにくい質問のひとつです。なぜなら「洗えます。」と答えるのは簡単ですが、使ってみて気に入るかはまた別の話しだからです。



「洗えます、でも市販のシャンプー&リンスを普段使っていたら、初めて石けんで髪を洗うときに、きしみを感じたり、櫛通りの悪さを感じると思います。ロングヘアだったり、パーマやカラリングをしていたらもっとそう感じるかもしれません。手作りの酸性リンスを用意しておくとキシミは改善できますが、クエン酸(ここでクエン酸とは何かの説明つき)はマンハッタンでは入手しにくく、お酢は臭いを敬遠する人が多く、レモン汁などは足が早いのでその都度用意する必要があります・・・。」なんて、講座終了後だったのをいいことに、長々と説明をしてしまいました。きっと半分くらい説明したところで「なんだか石けんで髪洗うの難しそうだな。」と思われたにちがいありません。

結局「洗えますか?」と聞かれて、最後に言った答えは「興味があったら試しに洗ってみてください・・」という消極的なもの。石けんはいいんですよ!って言いたいのに、石けんで髪を洗うのは工夫が必要だし・・なんだかうまくおすすめできませんでした。

でもそこで終わる訳にはいきません!最後に「石けんで洗うと地肌がすごく気持ちいいですよ!」と付け加えておきました。髪の質問をされているのに、肌で答えるなんてずるいけど。でもやっぱり石けんの気持ちよさは肌で感じるんですよね。

肌を洗うことと髪を洗うこと。似ているようで全然違うんじゃないかなと思って歴史を調べてみましたが、国や時代によっていろいろで、それだけで文化史の本が書けそうです。

ひとまず日本はどうだったかみてみると、武田勝蔵氏の「風呂と湯のこぼれ話」(村松書館)に「髪洗いの今昔」という章がありました。冒頭部分にいきなり「髪の日常の手入れにはなかなか苦心したもので」とあります(p95)。やっぱり大変だったんですね(笑)平安時代は長く伸びた髪を手入れしてもらうのは,月に数えるほど。側近などに手伝ってもらわないとできないほど大変だっとか。そのため頭髪の臭いをカモフラージュするために木まくらの中に香を焚いて「香まくら」で寝たそうです。

江戸時代になると「婦女は毎月一、二度必ず髪を洗ひて」とあります(武田。「守貞漫稿」より引用、p96)。ただし、「御殿女中は髪を洗うこと稀也」「京阪の婦女も之を洗う者甚だ稀」とあるように、洗髪は限られた女性のみがすることであったようです(同、p96)。

明治時代には湯水で溶かして使う「かみ洗い粉」なるものが登場し、ここで髪洗いが普及してきたようです。しかしやはり洗髪は面倒なものとみえて、銭湯では髪洗いのサービスが出始めました。明治43年の足利の浴場組合の規定帳によると、入浴料金がおとなひとり2銭、髪あらいは5銭したそうです。

こうやって見てみると、昔から髪を洗うというのは苦労がつきものだったようですね。石けんで洗うのは工夫が必要、なんて言ったら、昔の人に叱られるかもしれません(笑)